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農薬や肥料を一切使わない、自然の力だけで作る自然栽培米
ひやま農場(当別町) 桧山 雅一さん


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自然の力だけでもお米は作れる!

ひやま農場はお米を中心に生産している農場。中でも特に人気が高いのが自然栽培米だ。
最近では「無農薬」というフレーズをよく聞くようになったが、無農薬でも化学肥料を使っている場合がある。
有機肥料すらも使わず、自然の力だけで作られているのが、ひやま農場の自然栽培米だ。

▲ひやま農場のお米は全国に愛好者がいるため、人気のお米はすぐに無くなってしまう。

農薬を使わないで、農業ができないものか

昭和25年に当別町の原野を父親が開墾したのが、現在のひやま農場の始まり。
当時は農薬や化学肥料を使用した農業が主流で「農薬を使わないなんてことは考えられない」という時代。
しかし、桧山さんは農薬の影響で半日近く体調を崩すことが何度かあったことから「農薬を使わないで農業ができないものか」と漠然と考えるようになったという。

▲取材に伺った春先のひやま農場の様子。秋にはこの水田がたくさんの稲で覆われる。

父から農地を受け継ぎ、少しずつ無農薬のお米作りを始める

桧山さんは工業系の学校を卒業後、工場で働きながら農業を兼業していたが、やがて父の土地を受け継ぐことになり農業に一本化した。
ある年、お米の相場が大幅に下がったことで、農協にお米を出荷しているだけでは生活が厳しくなった。
そこで、試しにお米を直接消費者に販売してみたところ、これがうまくいって販路を拡げることができた。

お米を直接販売しているうちに、消費者もまた低農薬のお米を求める気持ちが強いことに気が付く。
「試しにちょっとだけ農薬を減らしてみようか」と低農薬のお米を作ってみたが、作っているうちに「どうせ農薬を減らすなら、やっぱり無農薬で作りたいな」と、無農薬米への想いが強くなっていった。
とはいえ、田んぼの大部分を無農薬に切り替えるのは相当の勇気と覚悟が必要だったが、 タイミングよく北海道の大手レストランチェーンが無農薬のお米を仕入れてくれることになり、ついに無農薬のお米作りに本腰をいれていくようになる。

▲苗を育てるための「パレット」。穴の一つ一つにお米の種が植えられている。

工業知識をフル活用し、独自の機材や方法を次々と作り出していく

実際に無農薬でのお米作りを始めてみたところ、様々な課題がでてきた。
その課題の一つに、田んぼに何度も何度も生えてくる草をどう取り除くかということがあった。

『正直、除草剤を使った方が仕事は凄く楽です。5-10分でまき終わり、一度まくとその年はもう草が生えてこないのです。 無農薬だと草を抜いても抜いてもどんどん生えてくるので、最初は手でいちいち草をとっていたのですが物凄く大変でした。』

手作業の限界を感じた桧山さんは、機械の力を使ってみようと除草機を購入する。
しかし、除草機では思っていたよりも上手く除草ができず、使い勝手も悪かった。
桧山さんは学校や工場で学んだ工業知識を活かし、なんと機械を自分で改造して使いやすいように変えていったという。

自身の強みである技術力を上手く使い、数々の困難を乗り切った桧山さんは無農薬(有機栽培米)と減農薬の2通りの農法を主体にする。
そして、無農薬米がある程度形になってきた頃、奇跡のリンゴで有名な木村秋則さんに出会ったことで、今度は自然栽培に取り組んでいくようになる。

▲「ポンピタくん」という機械を作って、パレットをビニールハウスに綺麗に並べていく。

減農薬、無農薬、有機栽培、自然栽培、それぞれの違い

減農薬(特別栽培米など)は、一般的には農薬や化学肥料は通常の半分以下、除草剤も毒性の低いものを使用する栽培法。
ひやま農場の減農薬米は除草剤を最初に1回だけ使用するだけで、農薬/化学肥料は一切使っていない。

無農薬は農薬の使用はしないが、使われている肥料等は意外と不透明で、化学肥料を使っていることもある。
その辺は生産者の理念によって、大きく違いがでてくる。

有機栽培は農薬、化学肥料、除草剤も使用はしないが、第三者機関からの基準があまり無く種や苗の土、有機肥料等の使用も生産者の理念による。
生産者及び団体がみずから基準を設けている場合もある。

JAS有機栽培は農林水産省が基準を設けている有機栽培。
農薬、化学肥料、除草剤の使用はせず、畦、農道や周囲の排水路などにも除草剤は使用はしない農法。
種や苗つくりの土にも農薬・化学肥料は不可で、苗用の土も化学物質は含まないものを使用する。

自然栽培は全く何も使わない農法。
そこにある土地の力、自然の力だけで作物を育てるという驚きの方法である。

いずれの農法も一概に良い・悪いと簡単に判断できるものではなく、一番大事なのは生産者と消費者の信頼関係ではないだろうか。

▲苗作りはお米の味を決める大事な作業。細心の注意を払って苗を育てていく。

虫がついている野菜は良い野菜?

「虫がつく野菜は良い野菜だ」というイメージをもっている人はそこそこいると思う。
ところが虫がつくのには理由があり、虫がつくから良い野菜だとは一概に言えないそうだ。
例えば栄養過多で硝酸性窒素が増えすぎているため、虫が多くついているということがあるらしい。
硝酸性窒素は人間が摂りすぎると発ガン性物質になったり、アレルギーの原因になったりすることを指摘する研究者もいる。

『(奇跡のリンゴの)木村秋則さんに教えてもらった自然栽培でキュウリを作ってみたところ、一年目は凄く美味しいキュウリができたんですよね。 二年目はもう少したくさんとりたいなぁ、と思ってほんのちょっとだけ有機肥料をいれたんですよね。 そうしたら虫がたくさんついてしまって、全滅してしまいました。』

例え無農薬や有機栽培であっても、自然界のバランスを崩した作り方をすると悪い結果に繋がってしまう。
無農薬や有機農法など特定の農法が一概に良いとは言えなく、誰が、どのように作ったのかが重要なのだ。

▲自然栽培との出会いは、桧山さんの農業への意識を大きく変えた。

自然と共に生きるということ

自然栽培の師である木村秋則さんに「自然から学べ」という言葉をいただいた桧山さん。
しかし、最初はその言葉の意味がよく分からなかったそうだ。
だが、自然栽培を続けているとだんだん「自分が作物を育てている」という感覚が無くなり、木村さんの言葉の真意が少しずつわかってきたという。

『自然栽培は(自分の中で)多分到達点だと思いますが、同時に自然栽培はスタート地点でもあります。 自然を通じて様々なことを知ることができます。自然の道理を知る。己を知る。自然と人との繋がりを知る。 哲学的になってしまいますが、何のために生きているんだろうとか、そういう人生観も今では自然栽培から影響を受けている気がします。』

桧山さんはまだまだ自分のお米に満足していない。
お米との対話は常に欠かさず、ソマチット農法、ミネラル還元農法など、新しい農法にも日々挑戦し続けている。

▲パレットを運ぶレールなども桧山さんが作製したものだ。

取材後記 「農業と自然」

農業は古来より自然の育みの中で営まれてきた。
しかし、いつの頃からか効率化の名のもとに、化学物質や農薬を用いた農業が一般化するようになる。

アレルギーの子供が増えている現代社会。
「自然なもの」が求められるのは、自然なことなのだと思う。

自然栽培は、もともとは古来からあった「人としての在り方・生き方」を表しているのではないだろうか。
晴れの日には土と語らい、雨の日には身体を休め、自然には決して逆らわず、自然と共に生きる。
桧山さんが自然とともに作り上げたお米は、農業の原点とも言えるのではないだろうか。




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